2. スターカウントとDSS
2.1 スターカウント
夜空において,暗黒星雲は星の数の少ない,暗い領域として認識される.これは,暗黒星雲が背景の星の光を散乱・吸収し,減光を引き起こしているためである.暗黒星雲を定量的に探る方法の一つに,星の数を数えて減光量を調べる「スターカウント法」がある.
1923年,Max Wolfは暗黒星雲およびその近傍の領域に対してスターカウントを行い,暗黒星雲が引き起こす減光と,暗黒星雲までの距離を定量する方法を提案した.これは特にウォルフ図法 (Wolf diagram method) と呼ばれ,減光量の分布や暗黒星雲の距離を求める手法として,今日まで広く用いられている(例えば,Cambresy, 1999).詳細は他書に譲るが(例えば,小暮,1994),暗黒星雲による減光を受けている領域での星数密度Ni(単位立体角あたりの星の数;個/ステラジアン),その暗黒星雲近傍で減光を受けていない領域での星数密度N0,および,星数密度の等級に対する傾きb を測定すれば,暗黒星雲による減光量Aλを求めることができる.このウォルフ図法の具体的な使用例については,我々が以前に開発した実験教材(神鳥 ほか,2001)を参考にして頂きたい.
第1章で述べた学術的な暗黒星雲の全天探査でも,このウォルフ図法を採用して減光量の分布を調べている.天文学の教育・普及を目的とした「暗黒星雲博物館」では,実際の星空の姿により近い星数密度分布で暗黒星雲の画像を紹介することにした.減光量の分布図では,星の数に関する情報が失われるため,天の川を認識できない.また,オリジナルの星野写真(DSSの生データ)のままでは, 天の川から離れた星の少ない領域の暗黒星雲を発見することは困難である.さらに,暗黒星雲の手前にひときわ明るい星があった場合には,その星に目を奪われるため,暗黒星雲の詳細な分布を見落としがちである.暗黒星雲が散光星雲や電離水素領域に覆い隠されていることも,しばしばある.暗黒星雲と天の川を1枚の画像の中で同時に表現するためには,星野写真を星数密度に焼き直した分布図がもっとも効果的である.
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