スターカウント(Star Count)

  星の光が宇宙塵(ダスト)によって,どれだけ減光を受けているかを知る方法にスターカウント法(星数え;星数計測)がある.具体的には,星が写っている写真(現在ではCCDの画像)の上に,グリッド(格子)を引き,それぞれの格子に入ってくる星の数とその等級を測定し,星の数(星数密度)と等級の関係から減光量を推定する.この暗黒星雲博物館の画像もすべて,可視光の星のイメージをスターカウント法で解析し,星数密度(星の数)に擬似的なカラー(色)をつけて表したものである.


もっと詳しい説明

 夜空において,暗黒星雲は星の数の少ない,暗い領域として認識される.これは,暗黒星雲が背景の星の光を散乱・吸収しているためである(減光).暗黒星雲を定量的に探る方法の一つに,星の数を数えて減光量を調べる「スターカウント法」がある.
 1923年,Max Wolfは暗黒星雲およびその近傍の領域に対してスターカウントを行い,暗黒星雲が引き起こす減光と,暗黒星雲までの距離を定量する方法を提案した.これは特にウォルフ図法(Wolf diagram method)と呼ばれ,減光量の分布や暗黒星雲の距離を求める手法として,今日まで広く用いられている.減光を受けていない領域での星数密度(単位立体角当たりの星の数),減光を受けている暗黒星雲での星数密度,および,星数密度の等級に対する傾きbを測定すれば,暗黒星雲による減光量を求めることができる.学術的な暗黒星雲の全天探査では,我々もこのウォルフ図法を採用して減光量の分布を調べている.天文学の教育・普及を目的とした「暗黒星雲博物館」では,実際の星空の姿により近い星数密度分布で暗黒星雲の画像を紹介することにした.学術的により興味深い減光量の分布図では,星の数に関する情報が失われるため,銀河面(天の川)を認識できない.また,オリジナルの星野写真(DSSの生データ)のままでは,明るさの違う星が多くありすぎるため,暗黒星雲の詳細な分布を識別しづらい.散光星雲や電離水素領域に覆い隠されてしまうことも,しばしばある.暗黒星雲と天の川を1枚の画像の中で同時に表現するためには,星野写真を星数密度に焼き直した分布図がもっとも効果的である.


引用文献

Dickman, R. L., 1978, AJ 83, 363

・小暮智一(1994):宇宙物理学講座 第3巻 星間物理学,ごどう書房