星間減光(interstellar extionction)

 H2領域や暗黒星雲のように星間物質が特に集まった場所はそれぞれ独立した星雲として観測されるが,宇宙空間(星間空間)には一般に薄く広がる星間物質が存在する.星間物質のうちガス成分(原子,分子,イオン)は星間吸収線,吸収バンドとして観測され非常に冷たい宇宙塵(ダスト)は,星間減光として観測される
 宇宙塵は固体微粒子であり,それが背景の星を散乱,吸収して星間減光の原因となる.


もっと詳しい説明

 暗黒星雲が存在すると背景の星は一様にΔm等級の減光を受ける.この減光の度合い(Δm)を減光量とよび,一般的に波長λに対する減光量をAλと書く.減光量を求める方法には代表的なものとして「スターカウント(星数計測)」と「星間赤化法」がある.我々東京学芸大学天文学研究室では前者の「スターカウント」と使った暗黒星雲探査の研究を進めており,この暗黒星雲博物館もスターカウントで計測した星の数に人工的な色を付けて表したものである.スターカウントはウォルフ図とよばれるグラフを用いて,星間物質が引き起こす減光量を測定する.wolf diagram
 ウォルフ図は横軸に見かけの等級(実視等級)をとり,縦軸にその等級よりも明るい星の総数(累積星数密度)をとったもの(累積星数曲線)である.このとき累積星数曲線は右図のようになる.この場合,実視等級は星までの距離の対数に比例するので,暗黒星雲のない星野での累積星数は右図の黒色の直線で表される.もし,その領域に暗黒星雲が存在すると,暗黒星雲の後ろにある星は 暗黒星雲によって減光を受けるため,星の累積星数曲線は図の赤色で示した線になる.暗黒星雲による減光が一様であるならば,星雲の背後にある星についての累積星数曲線は暗黒星雲のない星野の実線と平行になる.ここで一番暗い星が確実に写っている付近で,黒色の線と赤色の線の累積星数密度とその傾きbを測定することで,減光量AλΔm)を求めることができる.


引用文献

Dickman, R. L., 1978, AJ 83, 363

・小暮智一(1994):宇宙物理学講座 第3巻 星間物理学,ごどう書房