本ページでは、東京大学天文学教育研究センター木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡と2k-CCDカメラを用いて撮影された様々な天体画像から作成した、実習および演習用データを紹介しています。なお、ここで紹介しているデータは、木曽観測所の共同研究課題『105cmシュミット望遠鏡を用いた理科教育実践と観測データ教材化の試み』(E0403, PI:西浦慎悟[東京学芸大学])の下で作成されました。
現在は暫定版であるため、西浦個人ページでの紹介となっておりますが、将来的には東京学芸大学自然科学系宇宙地球科学分野が提供する教材として公開したいと考えております。なお、ここで使用した全ての画像データの著作権は、105cmシュミット望遠鏡と2k-CCDカメラを保有する東京大学木曽観測所にあります。本データを商業・営利目的で使用することを一切禁じます。また本データによって生じた如何なる損害・トラブルなどに関して、東京大学木曽観測所および本学本研究室は一切その責任を負いかねます、本データの使用は全て自己責任のもとで行って下さい。
概 要
- 画像解析実習用fitsデータ集
画像解析実習での使用を念頭においた、天体の可視光撮像fitsデータ集。観測データは、東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡と2kCCDカメラで取得したもの。1天体の多色撮像データを、ほぼ1CDの容量におさめてある。[教材詳細]
- HR図作成教材
すばる画像処理ソフト「マカリィ」と表計算ソフトを使用することで、容易にHR図を描画するデジタル教材。散開星団のfits画像と表計算ソフト用ワークシートからなる。なお、ワークシートには恒星進化モデルが入力されており、描画したHR図から散開星団の年齢や金属量を考察できる。本教材は、研究室OBの柏木氏との共同研究にて開発された。[教材詳細]
- 天体望遠鏡による簡易実験:天体望遠鏡を用いた遠方物体までの距離測定
小型天体望遠鏡(5~10cm程度)とコンパクト・デジタルカメラ(場合によっては携帯電話の付属カメラでも可能[?])、プリンターを用いて、天体望遠鏡を通して撮影した遠方物体の画像から、その物体までの距離を測定する簡易実験。実際には遠方物体の画像と併せて、20m程度先においたサイズ既知の物体の画像の2つを利用し、これらの視角から遠方物体までの距離を導出する。天体望遠鏡の操作方法を経験しつつ、簡単な算術で遠方物体までの距離を測定、その測定誤差の評価を実習することができる。この実験そのものは、天体望遠鏡の操作修得(というか操作経験)を目的としており、遠方物体(500m~2000m先)を望める適切な場所があれば、曇天時や雨天時でも可能である。[教材詳細]
- 膨張宇宙の年齢導出(簡易版)
デジタル・スカイ・サーベイ(Digitized Sky Survey = DSS)の銀河画像と簡単な仮定から、銀河までの距離を算出する。この銀河までの距離を、データベースから得られた後退速度と合わせることで、ハッブル図(銀河までの距離に対する後退速度をプロットした図)を作成し、ここからハッブル定数、そして、宇宙年齢を導出する教材。詳細を理解するためには高校1年生程度の数学と初歩的な物理の知識が必要となるが、作業を機械的に行うだけであれば、中学生でも可能。一番の難所は、一般的ではない単位 Mpc や kpc を使用する所と単位換算であろうと思われる。ここでは、一部のサンプルのみを公開する。他のサンプルについては、西浦・中田・三戸・宮田 (2007), 地学教育, 第60巻 第2号, pp.53-66. を参照されたい。[教材詳細]
撮像データの画像解析実習用のデータ集。1天体分のB, V, Rc, Icバンド撮像データとこれを整約するために必要なバイアス画像とドームフラット画像一式を1CDサイズに納めた。最低3バンド分の画像データを解析することで、天体の3色擬似カラー画像を作成できる。画像データと一緒に簡易版観測ログをテキスト形式で収録しているので、木曽観測所から別途観測ログを入手する必要がない。ただしこれら天体のほとんどは非測光夜に観測されているので、標準星を用いた精密かつ定量的な議論にはお勧めしない。また生データの集積なので1天体分のファイルサイズが著しく巨大になっている、注意して頂きたい。ダウンロード・ファイルは、サイズを少しでも節約するため、データをCDイメージ(iso形式)にしたものにさらに、zip圧縮を施してある。
また幾つかの天体については、本学の2年生対象の共通科目の授業で、実際に本データから作成したカラー(B+V+Rc)画像を提示した。なお解析は各バンド1枚ずつ、バイアス1枚を生データから差し引き、ドームフラットも各バンド1枚ずつ、という最低限の作業で行っている。勿論、色調も学生任せである、参考にして頂きたい。
なお、fits画像の解析については、濱部勝氏(日本女子大・理学部)が調整されたUSBメモリもしくはUSBハードディスクから起動するCygwinとPC-IRAF/SPIRALのセットを使用した。カラー画像の合成はアストロアーツ社製のステライメージ5で行った。後者はPC-IRAFやSAOImage/DS9などのフリーツールでも可能である。
天体名 DL容量-->解凍後容量 備考およびDL | 擬似カラー画像 (左クリックでフルサイズ表示) | 天体名 DL容量-->zip解凍後容量 備考およびDL | 擬似カラー画像 (左クリックでフルサイズ表示) |
散 光 星 雲 | |||
M17(オメガ星雲) 254 MB -> 448 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] | ![]() 2010年度プロジェクト学習科目IIより | M20(三裂星雲) 253 MB -> 384 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] | ![]() 2009年度プロジェクト学習科目IIより |
IC5146(繭星雲) 185 MB -> 312 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] | ![]() 2009年度プロジェクト学習科目IIより | ||
星 団 | |||
NGC7788/90 [散開星団] 273 MB -> 488 MB [Download] | Now Printing ! | M36 [散開星団] 275 MB -> 456 MB [Download] | Now Printing ! |
M3(NGC5272) [球状星団] 280 MB -> 456 MB [Download] | Now Printing ! | M13(NGC6205) [球状星団] 278 MB -> 456 MB [Download] | Now Printing ! |
惑 星 状 星 雲 | |||
M27(唖鈴状星雲) 273 MB -> 448 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] |
![]() 2010年度プロジェクト学習科目IIより |
M27(唖鈴状星雲) 342 MB -> 528 MB 青 = N487バンド(Hb) 緑 = Ha6577バンド(Ha) 赤 = Ha6737バンド([SII]) [Download] |
![]() 2011年度天文学特別演習 (ニ大学合同観測解析実習)より |
M57(リング状星雲) 276 MB -> 480 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] |
![]() 2009年度プロジェクト学習科目IIより |
M97(ふくろう星雲) 312 MB -> 576 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] |
![]() 2009年度プロジェクト学習科目IIより |
NGC7293(らせん状星雲) 146 MB -> 280 MB [Download] | Now Printing ! | ||
超 新 星 残 骸 | |||
M1(かに星雲) 277 MB -> 512 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] | ![]() 2009年度プロジェクト学習科目IIより | NGC6960-92-95(網状星雲) 248 MB -> 408 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] | ![]() 2009年度プロジェクト学習科目IIより。 本画像はNGC6992です。 |
楕 円 銀 河 ・ レ ン ズ 状 銀 河 | |||
NGC524 [楕円銀河] 243 MB -> 416 MB [Download] | Now Printing ! | ||
NGC5866 [レンズ状銀河] 260 MB -> 448 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] | ![]() 2010年度天文学特別演習 (四大学合同観測解析実習)より | NGC7332 [レンズ状銀河] 255 MB -> 448 MB [Download] | Now Printing ! |
渦 巻 銀 河 ・ 不 規 則 銀 河 | |||
M63 [渦巻銀河] 274 MB -> 456 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] |
![]() 2010年度プロジェクト学習科目IIより |
M101(回転花火銀河) [渦巻銀河] 246 MB -> 416 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] | ![]() 2009年度プロジェクト学習科目IIより |
M83 [渦巻銀河] 336 MB -> 568 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] 含、Ha,[SII]狭帯域画像 |
![]() 2011年度天文学特別演習 (ニ大学合同観測解析実習)より |
M83 [渦巻銀河] 336 MB -> 568 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Ha6577バンド(Ha) [Download] 含、広帯域BVRc画像 | ![]() 2011年度天文学特別演習 (ニ大学合同観測解析実習)より |
連銀河・銀河群・銀河団 | |||
M51(子連れ銀河) [連銀河] 272 MB -> 456 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] | ![]() 2009年度プロジェクト学習科目IIより | HCG61 [銀河群] 275 MB -> 456 MB 青 = Bバンド 緑 = Vバンド 赤 = Rcバンド [Download] | ![]() 2010年度プロジェクト学習科目IIより |
天体望遠鏡を地上望遠鏡として用いた場合、使用した望遠鏡のスペックにもよるが、数km先に位置する1~3m前後の物体を見ることが可能である。これをデジタルカメラなどを用いて接写し、被写体の実サイズと、画像中の物体の視角が分かれば、この物体までの距離を測定することが可能である。画像中の物体の視角は、実サイズが分かっている別の物体を天体望遠鏡の25~40mほど先に置き、それを天体望遠鏡を通してデジタルカメラで撮影することで計算可能である。この二つの観察および撮影データを比較することで、遠方物体の視角が算出できる。さらに遠方物体の実サイズ(ビルの窓、扉、クーラーの室外機)などを近場のものと同じと仮定すれば、視角と併せて遠方物体までの距離を導出できる。勿論、同時に測定誤差の評価も可能である。
下の左端は、屋内での天体望遠鏡の組み立てと調整作業の様子である。下中央は、撮影画像の視角を求めるために用いた卓上ライトである。これは天体望遠鏡の20数m先に置いたものであり、電球部分をノギスで、そして天体望遠鏡から卓上ライトまでの距離をメジャーで測定することによって、撮影画像内の視角を求める。下右端が距離を求める対象である遠方物体である。この画像には扉が写っているため、これを実験室の扉と同じサイズと仮定することで、この建物までの距離を導出できる。
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(上記画像を取得した実験日は2008年01月21日、本学1年生対象の「地学実験」にて)考察の際には、インターネット上の地図検索サイトや携帯電話のGPS機能などを用いることで、遠方物体までの距離を精度良く出すことができるため、これと実験結果を比較するのが良いだろう。また、本実験は遠くまで見通せる場所があれば、曇天時・雨天時でも天体望遠鏡の操作を経験させることができるというメリットがある。なお、本実験は、本学教育学部1年生を対象とした「地学実験」の1テーマとなっている。
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