普通、我々研究者が特定の星団のHR図を得ようと思った場合、観測を行ってデータ処理を行うか、偉大な先人達の論文をチェックするかである。望遠鏡の観測時間を得るためには、その研究意義が審査され、観測計画が採択されなくてはならない。まぁ研究ではなく教材作成が目的であれば、まずどこの観測所もまともな観測時間は割り当ててくれない(勿論、例外はいくらでもある)。さらに最近では、データアーカイブを漁ると、観測済み・解析済みの画像データがわんさか出てくることもある。さらに、ターゲットが典型的(typical)かつ古典的(classical)な星団であれば、大抵何らかの研究報告がなされているので、研究論文を検索するのも有効であろう。ただ論文を検索して、その中からHR図を得るというのは、研究者以外の方々には意外と大変な作業となる。そこで、ここではインターネット上で誰もがアクセスできるデータベースから、星団の情報を手に入れ、それに基づいてHR図を「簡単に」作成することを試みたい。ただし、その手順は必ずしもスマートでは無いことを予め公言しておこう、だからタイトルに「力技」というキーワードを入れてある。
星団サンプル:今回はメジャー(前述したtypical and classicalと同義と受け取って欲しい)な星団のHR図を作成する。そこでサンプルは、高校生が小遣いで購入することも可能な『理科年表』から選ぶことにした。ちなみに筆者の手元にあったのは平成21年度版である。理科年表の天文部に「銀河系内の星団」という項目があり、ここで主な散開星団と球状星団が記されている。ここではあまり深く考えず、適当に球状星団M3を選ぶことにする。図1に、筆者が東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡と2kCCDカメラで撮影したM3の可視光画像、表1にその基礎データを掲げる。
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名称 | M3 NGC5272 |
赤経(J2000.0) | 13h 42m 12s |
赤緯(J2000.0) | +28d 23m |
距離 | 3.39万光年 |
![]() (図2: VizeiRのトップページ) 図をクリックすると拡大表示されます。 |
![]() (図3: VizeiRの検索結果) 図をクリックすると拡大表示されます。 |
![]() (図4: M3のHR図、100恒星) |
![]() (図5: M3のHR図、1000恒星) |