最終更新 1999年 8月 6日

アブストラクト
本稿では、オプティカル・ディープ観測によって明らかになってきた、コンパクト銀河群の力学状態についての報告を行う。
コンパクト銀河群は数個の銀河から構成される、小規模かつ高数銀河密度の銀河集団である。銀河環境の面から見ると、コンパクト銀河群は孤立銀河と銀河団の中間に位置し、孤立銀河なみの系の小ささと銀河団に匹敵する高い銀河数密度という特徴を併せ持つことになる。それ故にコンパクト銀河群は、銀河の形成・進化と環境の関わりを調べるための最適な研究対象として、多くの天文学者の注目を浴びてきた。しかしその一方でコンパクト銀河群は、その規模の小ささが災いして、近年重力系としてのリアリティを疑問視する意見も少なくない。
コンパクト銀河群という環境における銀河の形成や進化を解明するためには、まずメンバー銀河が重力的に結びついたリアルなコンパクト銀河群をきちんと選出することが必要不可欠である。リアルなコンパクト銀河群では、頻繁な銀河衝突によって銀河内の恒星成分が銀河外に引き擦り出され、銀河群周縁部にエンベロープ成分が形成されると考えられる。そのエンベロープ成分の有無によって、リアルなコンパクト銀河群を選出することが可能である。
我々は木曾観測所の105cmシュミット望遠鏡を用いた、コンパクト銀河群のオプティカル・ディープ観測を進めており、現段階で13個のコンパクト銀河群にオプティカル・エンベロープを検出した。オプティカル・エンベロープの概形はX線観測から示されるホットガスの分布と酷似しており、このことからオプティカル・エンベロープは銀河群の重力ポテンシャルを反映していると考えられる。またオプティカル・エンベロープを有する銀河群では、銀河群質量、速度分散、そしてサイズという3つの物理量の各々の間に相関関係を示すことが確認され、この事実からオプティカル・エンベロープを持つコンパクト銀河群には
Fundamental Plane が存在することが判った。
またオプティカル・エンベロープを持つコンパクト銀河群のサイズと質量光度比の関係は楕円銀河のそれと良く一致し、コンパクト銀河群か楕円銀河の進化シナリオを支持する結果が得られた。
第1章
はじめに
第2章
サンプルおよび観測
第3章
観測結果
第4章
データ分析結果
第5章
考察