天文学研究室は正式には、東京学芸大学 自然科学系 広域自然科学講座 宇宙地球科学分野の一部門です。
現在(2022年10月)のスタッフ構成は土橋一仁(教授)、西浦慎悟(講師)の2名となっており、観測的手法による天文学研究を行っています。主な研究対象は土橋が暗黒星雲を中心とした星形成領域、西浦が銀河群を中心とした系外銀河です。
本研究室には各種の計算機が揃っており、観測で取得したデータを解析するために使用されています。また1970年代から、本学中央1号館の屋上に口径40cmの反射望遠鏡を所有しており、変光星のモニター観測や一般向けの観望会などに使用されてきました。2019年度には口径は40cmのままながら、最新の鏡筒、架台、CCDカメラ、フィルター・システム、制御用PCなどに更新され、望遠鏡ドームもオーバーホールされました。現在、観測装置の性能評価に平行して、晴れた夜には様々な天体の撮像データを取得しています。さらに、小学校から高等学校における理科の授業への活用にも取り組んでいます。
天文学は言うまでもなく天体を研究の対象としています。大部分の天体は手に取ることができないほど遠くにあり、地球上に住む私たちとは全くの無関係、そんなものを研究する天文学は役に立たない学問の最たるもの、と思われがちです。そのような考えが正しくないのは、私たちの生命活動が太陽に全面的に依存していることや、生活に不可欠な暦の作成が天体の運行に基づいていることを思い出せばすぐに分かることと思います。この際ここでは少し別の例を挙げましょう。
私たちの体を作っている物質はいろいろな元素でできています。そのうち原子の個数が最も多い元素は水素です。水素は宇宙創成の直後に合成されたと考えられる一番軽い元素で、宇宙に最も豊富に存在します。しかし、重量比に注目すると、宇宙では70%を越える水素は私たちの体には10%程度しかありません。逆に宇宙では1%に満たない酸素が私たちの体には約60%と最も多く含まれています。次に多い元素は炭素で約23%、次が水素で、それに窒素の約3%が続きます。
このように人体の元素組成は宇宙の元素組成とはまるで違っています。これら水素以外の重い元素はどこから来たのでしょうか?。実はこれらは大昔に輝いていた星の中で作られたと考えられているのです。その星の寿命が尽き、爆発したとき、星の内部で作られた重い元素は吹き飛ばされ、星間空間にまき散らされました。それが長い時間の後に集まって地球や私たちの身体を作ったと考えられています。したがって、私たちはみんな「星の子」と言えます。晴れた夜空に見られる星の中では、今この瞬間にもこのような重い元素が作られています。数十億年後にどこかの惑星に出現するであろう「人類」の原料を作っているのです。
こういうことを知っていると、遠くで輝いている星々が身近なものに思えるでしょう。あなたも自分のルーツである天体について勉強してみませんか?
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